ブレーキが効かなくなる経験

 世間では新型プリウスのブレーキが『一時的に』効かなくなる現象で騒動になっている。

 私は以前乗っていた車で経験している。十年以上前の話だが常に発生するので慣れていた。
 車は61式ジェミニ・イルムシャー。すぐにマイナーチェンジされたため8ヶ月間しか生産されなかった初期型。
このジェミニ。ブレーキペダルを踏み込むと当然踏み込み量に応じてスピードが落ちる。ところがブレーキを踏み込んでゆく途中でスピードが落ちないタイミングがある。しかし更に深く踏み込んでゆくと再び踏み込み量に合わせてスピードが落ちてゆく。

ブレーキが効ない


 推測だが、この現象はブレーキホースの膨張によるものと思われる。

 ブレーキは油圧によって動作する。レーキオイルは細い管の中を通っている。この管の一部はゴムホースになっている。
ブレーキペダルを踏み込むと管の中の圧力が高まりブレーキへ力を伝える。ブレーキペダルを踏み込めば踏み込むほど管の中の圧力は高まる。
管の中の圧力がある程度高まるとゴムホースの部分が圧力に耐えかねて膨張する。
膨張している間はブレーキオイルに伝わった圧力はゴムホースを押し広げるのに費やされ、ブレーキには伝わらなくなる。(つまり車のスピードは落ちない)
ゴムホースがある程度膨張するとゴムの反発力が(元に戻ろうとする力)強くなるので、それ以上は膨張せず、圧力は再びブレーキに伝わるようになる。(つまり再び車のスピードは落ちだす)。

 ひと言で片付けるならブレーキホースの強度不足。

当時モータースポーツ向けに強化ブレーキホースが市販されていた。たしかガレージ シロクマから出ていたように記憶する。他に別の車種だったかもしれないがオートメカニック誌にはブレーキホースのゴム部分全体に細い針金をきつく巻き付け、内圧でホースが膨張しないようにする小細工が紹介されていた。

つまりブレーキホースが膨張して一時的にブレーキが効かなくなるように感じる現象は当時は知られていて、でもそれを欠陥だとは誰も(ユーザもメーカーも)考えていなかったということだろう。

メーカーにはブレーキペダルを踏み込んで行く過程でブレーキの効きが加減が、ペダルの踏み加減と綺麗に連動しなくても、それは不細工なだけで欠陥というほどではないと考えていたのだろうし、昔のユーザはそれを受け入れていたフシがある。

しかし自動車という製品の完成度が上がるにつれて昔は不細工、不出来で片付けられていたことが「問題」として認識されるようになった。それが安全に関わるブレーキの事だからななおさら。

確かに今回トヨタは「お客さま目線」に立ってなかったと言えるだろう。



2010/02/09 23:38 補足
ジェミニ用強化ブレーキホースを販売していたのは「ガレージ シロクマ」でなく「オリエント スピード」だったかもしれない。