老兵、戦線に復帰す

 ウィルコムの初代W-zero3は日本にスマートフォンなるものを広めた先行者的存在だった。私の中では過去に日本で発売されたスマートフォンの中で最も使いやすいハードウェアの一つだった。
 キーとキーの間に十分な間隔があり、キー自体がわずかに盛り上がっている。誤って隣のキーと同時押しする危険性はほとんど無いし、キーを押したしっかりとした感触がある。しかもQWERTYキー列の上に1から0の数字キー列があり、そのキー列の上にも余裕がある。 ソフト的には入力後変換前に文字種類を一発で変更できる。たとえば『ローマ字入力かな変換モード』で『hiyoko』とタイプすると『ひよこ』と表示されるが、ここで『Ctrl+P』などを押すことで『hiyoko』『ヒヨコ』『hiyoko』など、パソコンでやってるのと同様に入力モードを変更することなく、なカナアルファベット全角半角の変更ができる。 それにCtrl+CやCtrl+Vでのコピー&ペーストといった操作にも対応しており、パソコンのキーボードに慣れている人にはとても使い。
w-zero3



 私がこの老兵に退役を勧告したのはセキュリティの問題からだった。WEPしかサポートしていないのだ。それにハードウェア・キーボードのクリック音。4人相部屋の病室に気を使ってこともある。

 今使ってるモバイルルーターはマルチSSIDをサポートしている。つまり複数の異なる無線LAN環境を共存させることができるのだ。 常用のセキュリティレベルの高いSSIDと同時に別に、WEPのSSIDを設ける。これで他の機器のセキュリティのレベルを落とさずにセキュリティレベルの低い機器をモバイル無線LANに参加させることができるようになった。
 それに同室の人たちは高齢の人ばかりで周囲お構いなしに音を立てる人ばかり。夜中にラジオをスピーカーでならす人もいる。かなり認知症で音量も話してる内容も不適切な人もいる。W-zero3のキーの音など聞こえないも同然なので。

 そこで今回の一時帰宅で初代W-zero3を戦線復帰させることにした。(ノートPCは家においてきた)

やっぱりこいつのキーボードは良い。 使い方はあくまでキーボード。テキスト・インプッターだ。W-zero3でやることはテキストを打って、オンライン・クリップボードに張り付ける。それだけ。
 あとは本来使用するアプリケーションがある端末で、そのオンライン・クリップボードを参照(コピー)して使用する。その端末のソフトキーボードが使いにくいのでテキストを打ち込むときだけW-zero3を利用するのだ。
 ちなみにオンライン・クリップボードというのはレンタルサーバ上に自分で構築したクラウドモドキ。 フルブラウザを搭載したPHS『AH-V3001K』が発売されたときに思いついた、PHS、携帯電話、パソコン、PDA、ゲーム機など、ネットにつながり基本機能のあるブラウザを搭載してさえいれば何からでも利用でき、テキスト、ブックマーク、画像ファイルなどを機器間で共有できるシステムだ(った)。 AH-V3001Kに搭載されたブラウザ『Opera』の開発元が『オペラ サーバーサービス』という、より強力なサービスを無料で始めたので、すっかりやる気をなくし開発は中断。今では自分が使う最低限の機能が不細工に組み込まれたブログ支援ソフトとして機能している。
 これを、W-zero3で打ったテキストをAndroidタブレットのアプリケーションに張り付けるための中継(クリップボード)として使ってるわけだ。

 私に合うキーボードを搭載したモバイル端末の新製品が出てくれば、退役した老兵W-zero3(初代)を復帰させたり、こんな出来損ないのクラウドモドキを使う必要は無いのだが、シャープ、NECソニー・・・残念だ